三菱重工業長崎造船所本工場内には、三菱合資会社時代の4つの構成資産(ジャイアント・カンチレバークレーン、第三船渠、旧木型場及び占勝閣)があり、対岸には同社が所有し、そろばんドックとも呼ばれている小菅修船場跡(1869年)がある。幕末、洋式舶用機械の修理技術すらなかった日本が、半世紀で巨大なドックを築造し、大型船を製造する技術を習得した。三菱重工業長崎造船所は、わが国の造船業を築いた重要な場所である。工場の電化(1897 年)、国産最大の商船常陸丸の建造(1898年)、パーソンズタービンのライセンス生産(1908年)が、三菱重工業長崎造船所に、歴史的なイノベーションを生み出した。
三菱長崎造船所 第三船渠(一般非公開)
第三船渠は、明治後期における船舶の急速な大型化と設備電化の中で建設された。1901~1905年にかけ、入り江の地形を利用し、背後の崖を切り崩し、前面の海を埋立て建設。建設当時の英国製電気モーターと排水ポンプは今なお現役である。竣工後も船の大型化に伴い、1943年、1957年、1960年の3回にわたり拡張された。現在は主に船舶の修理に使用。
三菱長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン(一般非公開)
英国スコットランドのアップルビー社製で、1909年、三菱合資会社時代、造船所の設備電化に伴い導入された。同型としては日本初。当時最新鋭で大型舶用装備品の荷重に耐え、電気モーターで駆動する。組み立て施工は英国スコットランドのマザーウェルブリッジ社が実施。今なお当時の吊り上げ能力を維持し、蒸気タービンや船舶用のプロペラなどの出荷に現役で使用されている。
日本には、本機を含め1913年までに同型が5基(3基は現存する)導入された。世界で同型は11基が現存しているが、本機は、スコットランドが国外に輸出し設置した最初の事例で、稼働している世界最古のものとして希少価値が高い。1928年に出版された三菱長崎造船所史の表紙にも描かれ、造船所の誇りでもあった。現在も世紀を超え、長崎湾のスカイラインに異彩を放っている。
三菱長崎造船所 旧木型場(現:長崎造船所史料館)
三菱合資会社時代、中央発電所の建設(1897年)を契機とする工場の電化と拡張に伴い、機械部品やプロペラなどの鋳物製造に用いる木型を製作するため建造された。鋳物の生産が縮小したため次第に役割を終え、 1985年に、長崎造船所の歴史を紹介する「史料館」として用途を変え、一般公開された。旧木型場の規模は電化後の生産拡大と、明治の造船事業の急速な発展を証言する、所内に現存する最も古い工場建築物である。木骨の小屋組みで、煉瓦造り(イギリス積み)の2階建て、U 字状の天井レールが据え付けられている。
三菱長崎造船所 占勝閣(一般非公開)
占勝閣は、三菱合資会社の時代に、第三船渠を見下ろす丘上に建設された木造2階建て洋館。工部大学校でジョサイア・コンドルに師事した曾禰達藏が設計し1904年に竣工。当初は長崎造船所所長宅として建築された。竣工の翌年にご宿泊された東伏見宮依仁親王殿下が「風光景勝を占める」との意味で命名された。以降長崎造船所の迎賓館として使用され、船舶の命名式等の祝賀会、貴賓の接待など造船事業の重要な行事が執り行われてきた。
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文化財指定: | 景観重要建造物 |
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所在地: | 〒850-8610 長崎県長崎市飽の浦町1番1号 |
見学申込: | 希望者は前日までに下記の電話番号に予約をしてください。 三菱重工業(株)長崎造船所 史料館 |
Tel: | 095-828-4134 |
Fax: | 095-828-4124 |
施設維持管理費: | 大人(高校生以上)800円 小・中学生400円 未就学児 無料 ※障害者 無料 |
開館時間: | 9時~16時30分 |
休館日: | 第2土曜日、12/29~1/4、電気設備点検日(未定) |
アクセス: | 最寄駅:JR長崎駅
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駐車場: | 長崎駅周辺の有料駐車場をご利用ください。 |
関連サイト: | 三菱重工業(株)ホームページ[長崎造船所 史料館] |